レジュメ担当:丸山
1.1 The Most Complicated Thing
脳は複雑である
- 850億のニューロンと、同数のグリア細胞からなる人間の脳。その外側にも消化管神経叢(enteric nerve system)などがある。網膜ひとつをとっても、100~150の細胞腫。
- さらに細胞一つの中も複雑であり、樹状突起も重要な役割を果たすことが知られる。
- 人間の脳は、世界の謎のなかで最も複雑。科学者の仕事は、複雑ではないように見えるようにすること。
1.2 Thought Is a Bandpass Filter
思考はバンドパスフィルター p.5
- 何かを概念化、カテゴリー化、命名するとき、対象から細部を取り除いて抽象化を行っている。
- 例:「花」は異なる種類の花を抽象化。「芝生」は草や草以外の植物を抽象化。
- 人間は個人ごとに名前を持つが、統計的に扱われることもある(交通渋滞や食糧需要を考える時など)。
- 言語的・数学的概念を用いる「言説的な思考(discursive thought)」では、必ず抽象化がなされており、どのような抽象化がなされるかは、タスクによる。
- 抽象化において何が重要な詳細(relevant detail)かは、「誰にとって」と「何のため」を常に問わなければならない。
- 著者はPhD研究で一次視覚野(V1)を研究。V1には、「空間周波数チャンネル」が並んでいると考えられていた。これは、脳=ある種の「バントパスフィルター」という単純化。
- この視覚系のチャンネル理論は、ある意味「言説的な思考」がやっていることと同じ。あるパターンや規則性を選択して、それ以外のものを無視する。
- 庭を見て「ユリだ」ということは、それ以外の情報を排除する「ローパスフィルター」に相当。
- 全く同じ2つの脳はないが、応答を予測・説明するための理論やモデルをつくるために、そうした個性はぼかされ、カテゴリー内の均一性という想定が課される。
- 本書の主張:神経科学を形成してきた主要なアイディアはどれも脳を単純化する試みである。
- The thesis of the book is that the dominant ideas that have shaped neuroscience are best understood as attempts to simplify the brain. p.8
1.3 Simple and Complex
単純と複雑の意味 p.8
- 「複雑である」とはどういうことか。
- 1)要素の数の多さ …ニューロンの数
- 2)要素の不均質性(heterogeneity)
- 3)時間的な不均質性 …脳は「テセウスの船」のように変わるもの
- 4)要素間の相互作用の多さ …各ニューロンは10000のシナプスをもつ
- 5)各要素の振る舞いは文脈依存 …実験条件を変えると結果は変わる
- 6)組織的な深さ(organizational depth) …要素や、要素の要素も複雑。
- 物理システムは、分解していくと均質な構成要素に行き着くが、生命システムはそうではない。階層構造をクリアに分離することもできない。
- 本書の目的は、神経科学の根底に単純で理解しやすいものがあるという仮定から読者を遠ざけること。
- 物理学では有用だった仮定は、他の分野で通用するのか問われるべき。
- Murray Gell-Manは、秩序とランダムさの間にあるシステムが複雑だとする「effective complexity」概念を提唱。科学は、そうした意味で複雑な系を、よりシンプルで規則的な見た目に変える**「理想パターンideal pattern」**を作りあげることで進展する。
- 科学のタスクとは、現実(reality)を記述することだけでなく、その対象を操作・コントロールするという目的のための記述をすること。そうした道具的な目的は、神経科学のほとんどの理論的活動から切り離せない。
1.4 Making Things Simple